徒然すきまかぜ

たなか徒然の日記

マイ・インターンを観て仕事を辞めた話

※映画『マイ・インターン』と『アンタッチャブル』の若干のネタバレを含みます。

 

マイ・インターンは、アン・ハサウェイが起こした服飾のネット通販の会社に、ロバート・デ・ニーロおじいちゃんがシニアインターンとして入って活躍する素敵なお仕事ムービーである。
我ながらそれ観て辞めたのか、元気もらって頑張るところじゃないのか、って感じなのだが、お仕事辞めちゃいました。甘栗むいちゃいました。どちらも悔い(食い)やすいでしょう。なんつって。

辞めちゃったお仕事の内容は、特に縁のない企業に突撃するタイプの営業、俗に言う飛び込みの営業職だった。
しんどいな~仕事行きたくないな~給料見合ってない気がするな~社長がうるせえな~眠れないな~食事が億劫だな~、という割と一般的なダウナーな日々を過ごしており、心療内科に通って薬を飲みながら仕事をしていた。この辺の話は始めると尽きせぬ愚痴の嵐になるので割愛。

そもそもマイ・インターンを観た動機は、楽しく働くデ・ニーロおじいちゃんから元気をもらえたらな~という気持ちだった。
モチベーションというモチベーションが枯れ果てた仕事の砂漠で、義務感という名の若干毒っぽい水で命を繋ぎ、点在する給与のオアシスからオアシスへふらふらしながら進む日々を、白馬に乗ったデ・ニーロおじいちゃんがなんとかしてくれんかな、という大変夢見がちな姿勢でDVDを見始めた。すでに一度観賞していて、おもしろい作品であるのは知っていた。

映画の割と序盤、デ・ニーロおじいちゃんが、ハサウェイ社長の会社に採用になって初出勤の前夜、着て行くスーツやら何やら準備するシーンがある。ルンルンしながら。すんごいルンルンしながら。
それを見て、ああ、と思った。ああ、こんな風にわくわくしながら出勤する人もいるんだなあ。
もちろん映画はフィクションなんだけどね。でもリアルにそんな感じの人もたぶんどっかにはいる。出勤が嫌すぎて泣きながらえずきながらカロリーメイトを流し込む朝だけが現実ではないなあと思えた。
以降は、私の状況でルンルンしながら出勤するにはどうしたらいいかなと考えながら映画を観ていたものの、エンドロールの頃にはまあ無理そうやなあという結論に至り、次にアンタッチャブルをDVDプレイヤーに入れた時には、辞めるかあ、という気持ちが固まっていた。
そして若かりしデ・ニーロが憎たらしいマフィアのドンを演じているのを眺めながら、頭の中で引き継ぎの段取りなどを整理し、アンディ・ガルシアがベビーカーを脚でキャッチするシーン(死ぬほどかっこいい)に黄色い悲鳴をあげ、その直後の出勤日に上司に退職の旨を伝えた。

新卒で入社してから三年を待たずしての退職だった。つらいのに耐えかねての退職は、自分の根性のないのを認めるようで、落伍者になるようで、それまでずっと抵抗があった。一般的に言う「三年は勤めなさい」というやつも何となく頭にあった。意地だったし、スタンダードから外れてはならないという義務感だった。今思うと、スタンダードって何よって感じだが。
とにかくそういうものが、私もルンルン支度したい、という願望にドカーンとはじき出されたわけである。
冒頭で悔いやすいとか言ったが、実は今のところ全く後悔的なものを感じていない。
むしろ肩の力が抜けて、変に拘泥することがなくなった。自分に優しくなったので気持ちが楽だし、人に対してもやや寛容になった気がする。許せないと思うことが減った。

というわけで、現在就活中である。
ルンルンしながら出勤できる職場を探している。
以上の退職に踏み切った経緯は、面接で話すにはちょっとアレなので、ここだけの秘密にする。